第36話

「ありゃま!これが噂のセンパイさん?」
「ありゃま!きゃふ〜んVSはにゃ〜ん」


マリーランド頂上決戦勃発。
きららっになってから登場し、すっかりレギュラーキャラとなったバク十一郎。
男の子でありながら性別を越えたかわいらしさでマリーランド住人にも大人気だ。そして、ヒヨコ王子に対する態度はまるで恋する乙女のようだ。
まあ、あの世界はそのへん寛容だから問題はないだろう。兄のバク君も一度はヒヨコ王子と挙式してたし。


対して、4年に渡って主役を張り、キャラクターとしての誕生からは実に30年以上を経過、酸いも甘いも噛み分けたマイメロ
やはり、元アイドルの娘ということもあってか、こちらもマリーランドでは大人気だ。バク君も、一時マイメロに惚れられた時は舞い上がっていたっけ。
その後、無残にも捨てられてしまったが。


だがしかし、天に二日の無き如く、地に英雄は並び立たず。
時代は、両者を対決へと導くのだった。


マイメロは知っていたのだろう。
バク十一郎が、容易ならざる傑物であることを。
が、決して言葉には出さぬ。
ただ、その漆黒の瞳を向けるだけだ。


クロミがいた。
きららがいた。
ナタリーもやって来た。
だが、それらはマイメロの地位を脅かすものではない。
彼女にとっては有象無象の類に過ぎないのだ。
マイメロのあるところ、主役は彼女だった、
彼女であるはずだった。


バク十一郎である。
彼、と、今のところ呼ぶべきなのだろう。
彼がマイメロの前を行くとき、人々の関心はバク十一郎に向かっている。
マイメロはその残滓を受けるに過ぎない。
そのとき、マイメロが、何を考えていたのか。
屈辱か。焦燥か。あるいは計略か。
人ならざる彼女の思考は、人類には窺い知れない。


日が過ぎてゆき、決戦はやってきた。
マイメロとバク十一郎の同点決戦。
対決は熾烈を極め、媚売り合戦は佳境に達した。


やがて、闘いは終わる。
投票者数、マイメロ108、バク十一郎107。
薄氷の勝利であった。
だが、バク十一郎は素直にマイメロを称え、自身の一票はマイメロへ投じたと告白した。
マイメロは、やはり、何も語らない。
語らぬのか。
語る術を持たぬのか。
それも、わからない。


しかし、仮定として、バク十一郎が、己の一票を己に投じていたとしたら。


歴史にもしもは存在しない。
マイメロは勝者であり、バク十一郎は敗者である、それが全てだ。
全てではあるのだが……。